自作小説『スキルマジック』8
「では、私が最初じゃな」
「少ない小遣いで悪いな」
「子供扱いするなと何時も言っておろう!?」
こほんっと咳払いし、後ろに持っていたプレゼントを差し出してくる。
「これは、写真立てか?」
「そうじゃ。何か飾りたい写真があれば、飾ってくれ」
「と、言っても写真なんかないしな」
(お? この写真立て二枚飾れるのか……二枚ねえ)
「む? どうかしたのか?」
「ああ、気づいたことがあるんだ。この写真立て二枚入るんだよ。だから、今撮ろう。一枚目が俺と一葉の二人で。二枚目が皆で。どうだ?」
「良い案じゃ」
「よし! 決まり。なら和也、撮ってくれ」
「了解!」
一葉は俺の手を握ってピースする。
此方を見る一葉が「お前もしろ」と言っている。
多少恥ずかしかったが、一生忘れない思い出になる写真だ。仕方がない。俺もピースをして苦笑いする。
「良し、OK。撮れたぞ」
一瞬で画像から写真となってスマホから出てくる。
「笑いかたがおかしいではないか!」
「頑張ったんだぞ裕翔は」
「悪いな。これが限界なんだ」
一葉と一緒に一枚目を飾る。
「ありがとうな。一葉」
「何がじゃ?」
「一緒に写ってくれて」
「うむ」
「次は二枚目。皆で撮ろう」
皆でピースしてシャッターの切れる音を待つ。
この写真。先程撮った一葉との写真。あの写真立てに飾る事によって絶対に残る記憶となるのだ。と、らしくもなく考えてしまう。この四人の一人だって欠けてはいけないのだ。この四人が居たからこそ、三人と巡り会えたからこそ、この写真はあるのだと。
(俺は幸せ者だ)
静かにシャッターが切れた。