自作小説『スキルマジック』14
――ヒュウウ。
柔らかな風が俺の髪を撫でていく。
「ここが、VRの世界、ここがスキルマジックの世界か!」
中世の西洋風の町には、巨大な防具を見に纏っている人々が溢れかえっていた。
そんな中で一番、目を引くのが最上層は雲の上にあるとされる【迷宮塔・ラグナワールド】
「お兄ちゃん!! 遅いよ」
ずっと待ってくれていたのだろう。沙織が頬を膨らませている。
「最初の設定に手間取った」
「お兄ちゃんは、どのクラスにしたの?」
「【援護者】(オペレーター)だよ」
沙織が口を半開きにしたまま固まる。
「オペレーター!?」
「何だよ」
「いや……私の憧れの人も確かそのクラスだったから」
「へえ、憧れの人か」
「うん、いつかその人より強くなってやるんだから」
「頑張れ。……そう言えば、一葉と和也は?」
「先に教会に行ったよ」
どうしても疑問に残る事がある。
「なあ、沙織。俺は昔このゲームをしてなかったか?」
「……知らないわ」
「それより! 教会へ行こう。お兄ちゃん」