自作小説『スキルマジック』15
「おお! 待ち望んだぞ」
「何だよ。その『シロカ』って名前は?」
「お気に入りだ」
「それはもう良いから、祈り捧げて来なよ」
「ああ」
教会の祭壇の前に行くと『祈りを捧げますか?』と、文字が表示される。
yesを選択する。
さて、どんな加護なのか楽しみだ。
『目を閉じて精神を集中させて下さい』
体の中に光が駆け巡る。
その光は波が引くように静かに消えていく。
オプションから個人ステータスを開き加護を確認する。
「【複製コピー】? あまり強そうではないな」
「どうだった?」
外で待ってくれていた三人に当然聞かれるであろう事を聞かれ、頭をかく。
「残念ながら、弱そうな加護だった」
「まあまあ。運みたいなものだし」
「少し見せてくれよ」
使い方はもう知っている。
加護を身に着けて直ぐに使い方を知れるシステムらしい。
和也に近づき、額に触れる。
「【複製】(コピー)」
電気が走ったかのように額に触れた手が痺れる。
「おお……お前!?」
和也の前に立っている和也の姿をした俺は笑みを浮かべる。
「以上だ」
【複製】(コピー)を解除する。
他人の姿になれる。それが俺の加護。我ながらなんて加護だ。
「う~ん。なんか……ショボイね」
「気にすることは無いが……戦闘向きではないな」
「それだけか?! シロカ」
「そうだけど。そう言うお前らは、どうなんだよ」
三人は申し訳なさそうに目をそらした。
「その様子だとお前らも大したことないんじゃ……」
「「「シロカを傷つかせたくない」」」
「……え? じゃあ一葉。お前はどんな加護だよ?」
「私の加護は……と。その前にVRでの暗黙の了解というやつを教えてやろう」
「そんなのがあるのか」
「一つだけ。かんたんの事じゃ。現実の名前では呼ばないこと」
「へえ。なるほどな……。そう言えば、仮想世界でもちっさいな、お前」
「……シロカ。では、自己紹介するとしようか。ゲーム名はイチハ。クラスは『魔術師』(ウィザード)。種族は巫女。
そして私の加護は、【熱戦】(レーザー)」
コチラに向かって手をかざす一葉。
頬に何かが掠る。
「え?」
頬が少し裂け、血が流れ落ちる。
「おい? 怒ってるよな? どう考えても怒ってるよな!?」
「怒ってるわけないだろう」
そう言いながら【熱戦】(レーザー)を乱射してくる一葉ことイチハ。
体に穴が空きまくる俺ことシロカ。