nap(ナップ)のうたた寝雑記

ゲーム(特にFPS)、ゲーム、漫画、アニメ、小説etc。色んな事を書くつもり

自作小説『スキルマジック』16

「『イチハ』と『ひとは』って大して変わらないじゃないか」

「まあ、そうじゃな」

 まさかあのまま殺されるとは思っていなかった。向こうの茂みには血溜まりが出来ている。が、その血も綺麗サッパリ消えてしまう。



 (さっきの死んだときの感覚……なんか嫌いだ。)





「それにしても、ひと……イチハの加護は凄いな」

「私のなんか序の口じゃ。二人はもっと凄まじい」

「まじかよ」

 今度は視線を和也に向ける。



「俺のゲーム名はカズ。クラスは、『守護者』(ガーディアン)。種族は後ろの羽を見れば分かるだろうが妖精。加護は刃ブレード」

「【刃】(ブレード)? 何だそれは」

「ここで見せるわけにゃいかない」

「なんでだよ?」

「俺の加護は範囲が広い。だから教会とか壊しかねない。別の機会にな」 

 きっと、和也も聞く限り凄まじい加護なんだろうな。うん。



「って、ゲーム名全然変わってないじゃないか」

「良い名前思いつかなくて」

「呼びやすいから別に良いんだけどな」



「じゃあ。最後、沙織の加護は?」

 猫の耳をピコピコさせている沙織に話を振る。

「私のゲーム名はサユリ。私の種族は獣人。クラスは『戦士』(バーサーカー)。加護は【流星群】(メテオライト)。これも範囲が広いから此処じゃ街が壊れちゃう」

「街が!?」



 なんて加護だ。



「そうじゃ、迷宮にでも入らんか?」

「そこでなら、二人の加護もみれるのか?」

「うん!」



 俺達は迷宮へと向かった。

自作小説『スキルマジック』15

「おお! 待ち望んだぞ」

「何だよ。その『シロカ』って名前は?」

「お気に入りだ」



「それはもう良いから、祈り捧げて来なよ」



「ああ」



 教会の祭壇の前に行くと『祈りを捧げますか?』と、文字が表示される。

 yesを選択する。

 さて、どんな加護なのか楽しみだ。

『目を閉じて精神を集中させて下さい』

 体の中に光が駆け巡る。

 その光は波が引くように静かに消えていく。



 オプションから個人ステータスを開き加護を確認する。

「【複製コピー】? あまり強そうではないな」



「どうだった?」

 外で待ってくれていた三人に当然聞かれるであろう事を聞かれ、頭をかく。

「残念ながら、弱そうな加護だった」



「まあまあ。運みたいなものだし」

「少し見せてくれよ」

 使い方はもう知っている。

 加護を身に着けて直ぐに使い方を知れるシステムらしい。

 和也に近づき、額に触れる。

「【複製】(コピー)」



 電気が走ったかのように額に触れた手が痺れる。



「おお……お前!?」



 和也の前に立っている和也の姿をした俺は笑みを浮かべる。



「以上だ」

 【複製】(コピー)を解除する。

 他人の姿になれる。それが俺の加護。我ながらなんて加護だ。





「う~ん。なんか……ショボイね」

「気にすることは無いが……戦闘向きではないな」

「それだけか?! シロカ」



「そうだけど。そう言うお前らは、どうなんだよ」



 三人は申し訳なさそうに目をそらした。



「その様子だとお前らも大したことないんじゃ……」

「「「シロカを傷つかせたくない」」」



「……え? じゃあ一葉。お前はどんな加護だよ?」



「私の加護は……と。その前にVRでの暗黙の了解というやつを教えてやろう」

「そんなのがあるのか」

「一つだけ。かんたんの事じゃ。現実の名前では呼ばないこと」

「へえ。なるほどな……。そう言えば、仮想世界でもちっさいな、お前」



「……シロカ。では、自己紹介するとしようか。ゲーム名はイチハ。クラスは『魔術師』(ウィザード)。種族は巫女。

そして私の加護は、【熱戦】(レーザー)」

 コチラに向かって手をかざす一葉。

 頬に何かが掠る。

「え?」



 頬が少し裂け、血が流れ落ちる。

「おい? 怒ってるよな? どう考えても怒ってるよな!?」

「怒ってるわけないだろう」

 そう言いながら【熱戦】(レーザー)を乱射してくる一葉ことイチハ。

 体に穴が空きまくる俺ことシロカ。

自作小説『スキルマジック』14

――ヒュウウ。

 柔らかな風が俺の髪を撫でていく。

「ここが、VRの世界、ここがスキルマジックの世界か!」



 中世の西洋風の町には、巨大な防具を見に纏っている人々が溢れかえっていた。



 そんな中で一番、目を引くのが最上層は雲の上にあるとされる【迷宮塔・ラグナワールド】







「お兄ちゃん!! 遅いよ」

 ずっと待ってくれていたのだろう。沙織が頬を膨らませている。

「最初の設定に手間取った」



「お兄ちゃんは、どのクラスにしたの?」

「【援護者】(オペレーター)だよ」



 沙織が口を半開きにしたまま固まる。



「オペレーター!?」

「何だよ」



「いや……私の憧れの人も確かそのクラスだったから」



「へえ、憧れの人か」



「うん、いつかその人より強くなってやるんだから」



「頑張れ。……そう言えば、一葉と和也は?」

「先に教会に行ったよ」



 どうしても疑問に残る事がある。

「なあ、沙織。俺は昔このゲームをしてなかったか?」





「……知らないわ」



「それより! 教会へ行こう。お兄ちゃん」

自作小説『スキルマジック』13

(名前か)

 何か俺にぴったりの名前とかはないものか。

 (しかし、良く再現できるよな)

 自分の転送体のモデルを眺めながら、ふと思う。

 (特に……髪色とか)



 俺は普段黒色の髪だが、実際は白色なのだ。真っ白になのだ。

 俺の髪の色素は全く何をしているのだか。

 俺は周りと違い自分の髪の色にコンプレックスを抱いていた俺は小学生の時に黒色に染め始めた。



 それなのに、このモデルは髪色が白色。

「白い髪……シロカミ……『シロカ』お!? 良くないか?」



『ええ。ピッタリだと思います』



『シロカ』と、3Dの液晶に打ち込んでいく。

『はい。以上で初期設定を終了し、転送を開始します。シロカ様』



「おう」



『このゲームデータは何処に保存したら良いですか?』



「普通にデータ1にしてくれ」

『しかし、データ1は、既にゲームデータが保存されています』



「は? なら、データ2に保存してくれ」



『かしこまりました』

 俺はデータ1に何かをセーブした記憶はない。ということは、昔の俺がこのゲームをプレイしていたということだ。そして、そのデータをバックアップしていた。



「ったく。昔の俺は何がしたかったんだ?」



 苦笑しながら独りごちる。予想通りこのゲームは俺の記憶に関係がありそうだ。



『転送開始』

自作小説『スキルマジック』12

『ようこそ、【スキルマジック】の世界へ。只今より初期設定を開始します』



 俺の目の前に液晶が現れる。

『ではまず、クラスを選択してください』



 液晶に浮かび上がる、5体のモデル。



『魔術師ウィザード』

 ・MPが高いのが特徴のクラス。

 ・他のクラスでは扱うことのできない【スペル】という魔術を扱ったり、スペルを作り出すことができる。



 下にスクロールしていくと、次のクラスの説明が表示される。



『戦士バーサーカー

 ・高いHPが特徴のクラス

 ・ステータスを10倍にする特殊スキル【オーバーストライク】を使うことが可能。





『援護者オペレーター』

 ・バランスがとれているクラス。

 ・他のクラスよりスキルを多く習得することが可能。







 『守護者ガーディアン』

 ・防御力が高いのが特徴のクラス。

 ・守護者専用スキル【オートガード】が使用可能。

・MPを大量に消費する代わりに、一時的に自動ガードをすることができる。



 『喰者イーター』

 ・特異性が特徴のクラス。

 ・プレイヤーやモンスターに数秒触れることによりプレイヤー、モンスターのMPを『喰らう』ことが可能。





 俺は少し考えた後、『オペレーター』を選択した。

 沙織の話を聞く限り、和也も一葉もこのゲームをしているらしい。

 ならば、その援護役として――。



『次に、種族を選択してください』



「種族?」

『はい。どの種族を選択するかによって、初期のステータスが決められます』

「なるほどな」



『人間』

 ・最も一般的な種族である。ステータスに変化はない。

 ・初期スキルとして超音波を飛ばして気配を察知する【サウンド】のスキルを習得することが出来る。しかし、範囲が限られており、半径10メートル以上は察知できない。一回このスキルを使うと3分間は使うことができない。

 ・オペレーター向き





『獣人』

 ・獣と人間のハーフの種族。

 ・HP+100

 ・攻撃力+20

 ・バーサーカー向き





『サイボーグ』

 ・科学力の発達により誕生した人型ロボット。

 ・知力と耐久力が増加する。

 ・耐久力とは装備をが壊れにくくなるステータスである。

 ・知力+20

 ・耐久力+10

 ・ガーディアン向き



『妖精』

 ・優しさの象徴である種族。

 ・MPが増加する。

 ・MP+30

 ・ウィザード向き

『ゴースト』

 ・全ての種族の怨み、憎しみが具現化した種族。ステータスの変化はない。

 ・初期スキルとして背景に自分を紛れ込ませる

【ステルス】を習得することが出来る。しかし、攻撃する際には姿を現さないとならない。一度触れられた又は、触れた相手には1分間はステルスを使用しても効果を成さない。

 ・イーター、オペレーター向き



 『巫女』

 ・女性専用の種族

 ・【高速発動】のスキルがつく

 ・ウィザード向き





「ふーむ。これはどうすればいいのか」

 選択肢は既に二つまで絞られているのにも関わらず、決めることができない。

 どちらのスキルも捨てがたい。ステルスで隠れて援護役をこなすか、センサーにより周囲の状況を判断しそれに応じて援護……。



「悩むな。自分のゲームのプレイスタイルは決まっているのに」



『簡単に考えられてはいかがですか?』

「そうだな」



 シンプルに良さげなスキルを。



「ん~そうだな。それじゃあ俺は……『人間』で」

『承知いたしました』



『転送体が決定しました。変更等がないかご確認下さい。身長や、顔は現実世界をモデルとしています故、変更することができません。しかし髪色等は初期設定の後でも変更可能です』



 転送体のモデルが表示される。





『    』



・クラス 援護者オペレーター

・種族 人間

Lv.0

・初期ステータス

HP 1000

MP 100

攻撃力 100

知力 100 

筋力 100

耐久力 100

・初期スキル

サウンド



・加護

『   』



『設定に間違い、変更等はありませんか?』



「質問。この『加護』ってなんなの?」

『それは、マスターだけが使うことが出来るたった一つのスキルです。ゲーム内の教会へ行き、神に祈りを捧げて下さい。そうすれば加護を得られます』



「ああ、そういうこと。なら、もう変更する事はないよ」









『了解しました。最後に転送体の名前を登録してください』

自作小説『スキルマジック』11

俺は中学校時代の記憶がない。

和代さん曰く、「ご両親と登山の途中に土砂崩れにあった」だとか。

 リセットされた記憶で最初に見たものは、大粒の涙を流す沙織の姿だった。



 もう沙織を泣かせない。



 俺はそう誓った。



 しかし一つの奇妙なことがある。俺の記憶がないのは中学時代のときであるのに両親の顔を知らない。

 沙織も両親は知らないと言う。

 確かな確証はないが、このゲームには俺の記憶に関係があるような気がするのだ。

自作小説『スキルマジック』10

「おーい沙織。これはどうやって動かすんだ?」



 扉が開く音がして、沙織が入ってくる。

「これなんだけど……おい、ふ、服」

「へ?」

 顔に疑問符を浮かべ沙織が自分の格好を見る。

「きゃああ!?」



 沙織の格好はYシャツだけで、ボタンは止めていない。水色と白の縞模様のパンツは丸見えでしかも、ブラも見えている。



「何も見てない!ホルターネックのブラと、フルバックショーツなんて見てないから……って」



 ちょっと待て。自分で自分の首をしめてどうする。



「!? なんで種類まで知ってるのよ変態!」



 涙目の沙織が睨み付けてくる。



「もうっ! 洋服着てくるからちょっと待ってて」



 待つこと暫し。



「で? どうしたのお兄ちゃん」

「この機械ってどうすれば動くんだ?」



「あー。これは水が必要だね」

「水?」

「うん。2リットル位」

「分かった。持ってくる」




  1. + + + +



「持ってきたぞ?」

「ここに注いで」

 沙織が指したダイブルームの後ろ側にはポットのような機械があった。



 言われた通り、水を入れ終える。

『ダイブルーム 起動します』



「あとは、指示通りやれば出来るから」



「サンキュー」



『お久しぶりですね。マスター』

「どうすればいい?」

『まず、下着だけになられて鉄の扉を右へスライドし、ダイブルームの中にお入りください』



 だから、沙織は服を着ていなかったのか。沙織に抱いていた疑問が解けた。

 下着だけになり、ダイブルームに入る。



『その後、マスクを装着してください。その際、きっちりと呼吸ができるかご確認下さい』

「これか」

 マスクを装着して呼吸を行う。

『大丈夫でしょうか? 10秒後、このダイブルームは液体で満たされているでしょう。しかし、焦らず【ダイブ】と口にしてください。』



 本当に液体で満たされ始めるダイブルーム内。

 液体は緑色。視界も緑色に変化していく。



 (なんだ? この心が震える感じ)

 何処か笑い声が聞こえてくる。

 (俺は……笑ってるのか?)

 この先見るであろう景色に胸が踊る。

 この気持ちは言葉では言い表せない。

 俺は小さく深呼吸し、心の中で蠢く全ての気持ちを言葉に込めて一つの単語を口にした。



 「ダイブ!!」