自作小説『スキルマジック』2
ーー数年前まで偶像の存在だったVRシステム。
それがもうこんなにも身近なものになっていた。
俺は視線を横に流す。
視線の先には埃をかぶったダイブルーム。
突然、扉が空いた。
「お兄ちゃん? ご飯出来てるよ」
「……ノックしろよ。着替えてるかも知れないだろ」
「っ!? 呼びに来てあげたんだから感謝しなさいよ! そ……それを!」
耳まで真っ赤にして激昂する16歳の現役女子高生は俺のたった一人の妹 白井しらい 沙織さおりだ。
「(朝方から元気なやつだ)」
布団から起き上がり、沙織を見る。
「あ! 今馬鹿にしたでしょ!」
ーーこういうときだけ勘が良いいんだよな、コイツ。
「おはよう、沙織」
背伸びをしながら部屋出口へと歩を進める。
急にバランスを崩す。原因は直ぐに分かった。
重心破壊者バランスブレイカー。
……もとい、バナナの皮。
勢いよく転んでしまう。
「イテテ……」
頭を多少打撲したようだが大事には至らなかったようだ。
(柔らかい床だな)
おかげで怪我をせずにすんだのかもしれない。
「きゃっ……!? ななっ……」
「どうかしたのか?」
顔を上げる。
俺は事態を把握し、声にならない悲鳴を上げた。
大事故だ!!
俺が柔らかい床だと思っていたのは……俺が揉みしだいていたものは……。
実の妹の胸ーー。
まだ発展途上でまだまだ幼げで主張が控えめであるが、とても柔らかい。制服越しでも伝わってくる沙織の体温。
天国か地獄。どっちに行くのかなぁ。
「ば……馬鹿あああああああ!」
俺の右の頬は沙織の甲高い悲鳴と共に強烈なビンタを受けた。