自作小説『スキルマジック』10
「おーい沙織。これはどうやって動かすんだ?」
扉が開く音がして、沙織が入ってくる。
「これなんだけど……おい、ふ、服」
「へ?」
顔に疑問符を浮かべ沙織が自分の格好を見る。
「きゃああ!?」
沙織の格好はYシャツだけで、ボタンは止めていない。水色と白の縞模様のパンツは丸見えでしかも、ブラも見えている。
「何も見てない!ホルターネックのブラと、フルバックのショーツなんて見てないから……って」
ちょっと待て。自分で自分の首をしめてどうする。
「!? なんで種類まで知ってるのよ変態!」
涙目の沙織が睨み付けてくる。
「もうっ! 洋服着てくるからちょっと待ってて」
待つこと暫し。
「で? どうしたのお兄ちゃん」
「この機械ってどうすれば動くんだ?」
「あー。これは水が必要だね」
「水?」
「うん。2リットル位」
「分かった。持ってくる」
- + + + +
「持ってきたぞ?」
「ここに注いで」
沙織が指したダイブルームの後ろ側にはポットのような機械があった。
言われた通り、水を入れ終える。
『ダイブルーム 起動します』
「あとは、指示通りやれば出来るから」
「サンキュー」
『お久しぶりですね。マスター』
「どうすればいい?」
『まず、下着だけになられて鉄の扉を右へスライドし、ダイブルームの中にお入りください』
だから、沙織は服を着ていなかったのか。沙織に抱いていた疑問が解けた。
下着だけになり、ダイブルームに入る。
『その後、マスクを装着してください。その際、きっちりと呼吸ができるかご確認下さい』
「これか」
マスクを装着して呼吸を行う。
『大丈夫でしょうか? 10秒後、このダイブルームは液体で満たされているでしょう。しかし、焦らず【ダイブ】と口にしてください。』
本当に液体で満たされ始めるダイブルーム内。
液体は緑色。視界も緑色に変化していく。
(なんだ? この心が震える感じ)
何処か笑い声が聞こえてくる。
(俺は……笑ってるのか?)
この先見るであろう景色に胸が踊る。
この気持ちは言葉では言い表せない。
俺は小さく深呼吸し、心の中で蠢く全ての気持ちを言葉に込めて一つの単語を口にした。
「ダイブ!!」