自作小説『スキルマジック』5
「ただいま」
恐る恐る賃貸マンションの209号室に入る。
人がいるとは思えないほどの静けさ。
俺は生唾を飲み込みリビングへと急ぐ。
(唐揚げ様をさっさと置いて部屋に戻ろう)
リビングへのドアを開ける。
その瞬間、微かな火薬の匂いと破裂音が鼻腔と鼓膜を刺激する。
「うっお!」
驚きのあまり尻餅をつく。
「痛った」
尻をさすりながら視線を戻すとそこには沙織がドアの前
で仁王立ちしていた。
「さ、沙織?」
そっぽを向いた沙織が唇を尖らせて
「その……お兄ちゃん、誕生日おめでと」
「あ……」
そうだ。すっかり忘れていた。今日は、7/11は俺の誕生日だ。
差し出された手を掴んで起き上がり、沙織と一緒にリビングに入る。
「すげぇ」
そう感嘆の声が漏れるのも仕方がないくらい、綺麗に飾り付けがなされていた。
「ありがとうな、沙織マジで嬉しいよ」
「そう」
沙織は金色の髪を乱暴に払って台所に消えた。
「おい、俺らには何もないのか?」
ふいに横から声がする。
「ありがとな。和也」
「おう」
グータッチ。
「痛っ」
「俺も同じだ」
二人で笑い合う。
コイツは、山葉やまは 和哉かずや。
俺や、沙織が小さい頃から和也とはよく遊んでいたらしい。親とも顔見知りで母の和代さんは両親がいない俺らをすごく気遣ってくれていて、たまに様子を見に来てくれたりする。